日常生活に支障をきたす芝居


もし、この身に傷をつけその傷からこの芝居の観たままを吸収できるのなら、
喜んで血を流すよ。今なら。
・・・なんてな。ビョーキです。重症。


ほんとに支配されてるんだ。カリギュラに。
劇場出ても駅まで泣いて歩いた。
あの美しくて破廉恥で、純粋で残虐で、自由で孤独で皇帝を想って。

毎日、生きて殺して死んで。組みたてて崩して。その繰り返し。
『血の婚礼』の時もそう思ったけど、役者とはなんと自分を摩耗する仕事なんだろう。
最後のカテコ、一人で下手側でお辞儀をして、
ちらっと見せた笑顔に少しホッとしました。


カミュも今ごろ嫉妬してるんじゃないだろうか?


本日は下手側の1F席。
この間、だいぶ見切れた場面を補填できます。
妄想で埋めてたからなー。
一幕一場、ピンクのスプレーで鏡にうつる自分を消す場面もそう。
あんなに狂ってるとは思ってなかった。
ガクガクブルブル頭を震わせて、このままどうにかなっちゃうんじゃないかって位。
怖かった。
怖かったと云えば、放浪から帰ってきて『オレは論理を完結させる』という場面の
ネオンに彩られた中央の椅子に座っている時の目も。
寄り目で完全にイッちゃってる。濃い目の隈取りアイメークが一層異常さを際立たせて。


今日はカリギュラ以外の人物にも泣かされました。
シピオン、勝地君ってこんなにいい芝居するんだ。
今まであんまり知らなかったよ。ごめん。
自分の父親を殺されてもなおカリギュラの側にいる。
好きだと素直に言えるあの純粋な瞳。
でもその彼の純粋さもカリギュラと似ている。
二人で詩を読むシーンも本当に切なくていいし、
さようならと去っていく場面も哀しくて鳥肌立ってしまった。


論理を一貫させる為に奪い、犯し、殺し、悪の限りをつくす
それでは世の中は成り立たないと説くケレア。
彼がカリギュラに論駁され、膝をつくところ。
うなだれ方が実に良かった。
クーデターを企てつつも、どこかでカリギュラをアドマイアしていたと思うから。
でもコイツには勝てない、殺すしかないと、そんな意味合いもあの膝を折る
っていう動作が表しているように思えた。


成り上がりなエリコンのあの始終イヤミっぽい下品な行動も好き。
下品と云えばね、ケレア宅での食事のシーンでのカリギュラのゲップもスゴイッス。
よくあのタイミングで出せるなー。
今日は食事の場面では食べたモノをボロボロ口から出しつつ暴言吐きまくってた。
頬張り過ぎた?
そして右手でナイフはちとツライ?いいんだよ。どうせ手で食べちゃうんだから。


心臓がドキドキするのはやっぱりラストの鏡の場面。
ワタシの位置からだと生身を含めて5人のカリギュラが写ります。
鏡にどんどん近づいて、これでは自分が殺していった人間と同じことをいるんじゃないかと
自分自身に問い掛けるシーン。
心臓の鼓動が自分でもわかるくらい。
怖い、恐ろしい。でも見たい
毎日、毎日あの鏡は新しいのをはめているんだろうか。
そこからあのたたみ掛けるような暗殺のシーン。
笑いながら斬られてる。
なんであんなにキレイなの。


最初のカーテンコールはまだ息が上がった状態で。
しかし、じっくりお客様の顔を見ています。
3度目?スタオベの観客に驚いた様子。再びお客様の顔を見て頷いています。
なんだか誇らしげだな。そして余裕が感じられました。
最後チラっと見せてくれた笑顔にキュン。


リピーターかなりいるものと思われ、パンフレット売り場などはそんなに混んでいませんでした。
それと、ニ幕一場でのあのヴィーナスの場面。
エリコンとセゾニアはお客様に同じ台詞繰り返し云うように煽ります。
今日の最前列の人はグッジョブって若林さんの親指が上がってました。


王子様っていうファンは置いていくっていってたけど、
もうすっかりみんな虜だと思いますよー。
若い子たちもフランス文学やシャイクスピア読むんじゃないかしら?