小春へ

19歳の猫、人間で100歳位なんだって。
大きな古時計』みたいな猫だな。
嬉しい事も哀しいこともみんな知ってるもんね。
そうだよ、学生から社会人になって、何人かのボーイフレンドと
出会って、別れて、結婚して、小春には全部見られていたね。
酔っ払って、朝帰りの私に「まったくしょうがないなー」と
薄目を開けてチラっと見て、また寝る、そんなアナタが居て救われてたな。
仕事で悔しくて泣いてる時にも、親と上手くいかなくてイライラしている時にも
アナタは絶妙のタイミングでニャーンと鳴いてくれて、気持ちが不思議と落ち着いたものよ。
兄弟3人はみんな結婚して家を出て、姉には3人も子供が出来てね。
みんな可愛がってくれたよね。
父が突然天国に行ってしまった時はお棺にすり寄って別れを惜しんでくれたね。
くりくり大きなお目々と艶々の3色の毛がいつまでも若々しい娘さんっぽいと
言われていたけど、その割には性格は気が強くてね、獣医さんも困らせてたね。
ウンチをした後、ナゼか走り回る不思議な子。
猫のおもちゃより、スーパーの袋が好きな庶民派。
抱かれるのが嫌いなくせに、寂しくなると寄ってくるわがまま女王。
でも、大好き。
もう温かいアナタに逢えないのは、本当に寂しいけど
いつまでも忘れないよ。
私もアナタみたいに長生きをして色んなものを見てやるんだ。
空からずっと見ててよね。
じゃあね。